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B.L.S.救急KOBEでは、救護班活動や救命講習活動をはじめ、様々な活動を行っております。
またメンバーは学生や主婦、看護師や救急救命士まで、色々な職業の方が参加して下さっています。
そのため、メンバーそれぞれに知識や技量に差があるのは当然のことです。
しかし、そこをお互いに補い合い、チーム全体のスキルアップを図ろうと、独自研修会の開催や
メンバー専用のマニュアル作成などを通して、全メンバーの救護能力向上に向けて取り組んでいます。

ここでは、その中でも以前に新入隊員など全メンバーに向けて【基礎から学ぶ救護班講座】と題して
配信した全5回の研修資料のうち、第1〜4回をご紹介します。


第1回 〜救急基本用語編〜
第2回 〜バイタルの取り方編〜
第3回 〜各種応急手当編〜
第4回 〜傷病者への接遇編〜











第1回 〜救急基本用語編〜

 第1回の今回は、基本の用語を確認していきます。
 どれも救急・医療の現場で普通に使われる言葉ですので、救護班として最低限覚えておきましょう。

[CPA]
(シーピーエー)
 =心肺停止状態のこと。
  いわば最も死に近い状態。一刻も早い心肺蘇生措置が求められる。
  心臓自体が原因のもの、呼吸停止が原因のものなど、心肺停止に至る理由は様々である。

[CPR]
(シーピーアール)
 =心肺蘇生法のこと。
  胸骨圧迫と人工呼吸を、30:2のサイクルで行う。
  思ったよりも疲れるため、出来れば2分 (5サイクル)ごとに他の人と交代で行う方がよい。
  強く・早く・絶え間なく。

[バイタルサイン]
 =生命兆候、生きている証のこと。
  心拍数、呼吸数、血圧、体温の4つに、意識レベルを加えた5つを指す。
  さらにSpO2を含めた6つを指す場合もあり、これらを測定することを「バイタルを取る」などと言う。
  患者観察の基本中の基本。測定できるようになろう。

[意識レベル]
 =意識の状態を誰にでも分かるように数値化したもののこと。
  日本ではJCS
(ジャパン・コーマ・スケールの略)とGCS (グラスゴー・コーマ・スケールの略)という
  2種類の表し方が主に使われており、まずは簡単なJCSから覚えておくと良い。

[心拍数]
 =心臓が1分間に拍動する回数のこと。
  略して書く場合はHR
(ハートレート)と書く。(例:HR60)
  正確な心拍数は心電図を取らないとわからない。
  脈拍数とは厳密には異なるが、同じものと考えて良い。

[脈拍数]
 =橈骨動脈や総頸動脈に触れて感じる、1分間あたりの脈の回数のこと。
  略して書く場合はPR
(パルスレート)と書く。
  Pulseは英語読みではパルス、ドイツ語読みではプルスと発音する。どちらでも良い。

[呼吸数]
 =1分間あたりの呼吸の回数のこと。
  略して書く場合はRR
(レスピレトリーレート)と書く。

[血圧]
 =血液が血管内を流れるときに、血管の壁を押し広げようとする力のこと。
  心臓が収縮するときの血圧を収縮期血圧といい、
(最高血圧、「うえ」とも言う)
  拡張するときを拡張期血圧という。
(最低血圧、「した」とも言う)
  また収縮期と拡張期の血圧の差を脈圧という。
  血圧の高い低いは、基本的にその人の普段の血圧と比較して、普段より高いか低いかで判断する。
  略して書く場合はBP
(ブラットプレッシャー)と書き、上と下の数値の間は/で区切る。
  (例:BP120/80)

[体温]
 =体の温度のこと。
  基本的には腋窩 (エキカ、脇の下)で測る。
  略して書く場合はBT
(ボディーテンパーチャー)と書く。ドイツ語読みでKTと書く人もいる。
  平熱は人により異なるが、35℃以下または39℃以上は危険。

[SpO2]
(エスピーオーツー)
 =経皮的動脈血酸素飽和度のこと。
  血液の中にどのぐらいの割合で酸素が含まれているかを%で表す。
  サチュレーションと呼ばれたり、サーチと略される場合も多い。
  96%以上で正常と言われ、それ以下の場合は血液を送る循環器系(心臓など)か、
  酸素を取り込む呼吸器系(肺など)に問題がある可能性有り。パルスオキシメーターで計測出来る。

[AED]
(エーイーディー)
 =自動体外式除細動器のこと。
  英語のAutomated External Defibrillator
(オートメイテッド・エクスターナル・ディファイブリレーター)
  の略で、言わずとしれた電気ショックにより心臓の細動を取り除く装置。
  CPRの一つとして、胸骨圧迫と組み合わせて使用する事が望ましい。
  ただしAEDは傷病者の心電図波形によって、適用される場合とされない場合があるため、
  CPAであっても毎回「電気ショックが必要です」とはならない可能性がある事に注意。

[BVM]
(ビーブイエム)
 =バック・バルブ・マスクという器材のこと。
  マスク部分を傷病者の鼻と口を覆うように当て、バック部分を揉むことで人工呼吸が行える。
  ただし、使用には技術と慣れが必要なため、自信がなければレサコ等のマウスピースを使う方がよい。
  アンビューバックとも呼ぶがこれは商品名。

[心疾患]
(シンシッカン)
 =狭心症や心筋梗塞など、心臓の病気のこと。
  心疾患が疑われる傷病者(激しい胸痛を訴えている等)は、絶対に寝かせたり歩かせてはいけない。
  横にした途端にCPAになる事がある。必ず安静に、座らせた状態で救急車の到着を待とう。

[ショック状態]
 =様々な事が原因で起こる血圧低下により、重要な臓器に血液が行かなくなった状態のこと。
  ビックリしたりショックを受けるという意味ではない。
  ショック状態は放置すると死に至るため、直ちに救急車で救命センターへ運ばなければ命に関わる。
  ショックは大きく以下の4つに分類される。

  @心臓自体の何らかの異常が原因で、送り出す血液量が下がっている場合。
   (心原性ショック)
  A何らかの原因で血管が拡張してしまい、相対的に血液量が足りなくなっている場合。
   (血液分布異常性ショック)
  B体内外への大量出血などによって、血液の量そのものが減っている場合。
   (循環血液量減少性ショック)
  C何らかの原因で心臓が圧迫され、心臓が動きにくくなり血液が送れなくなった場合。
   (心外閉塞・拘束性ショック)


 以上、〜救急基本用語編〜 でした。







第2回 〜バイタルの取り方編〜

 今回はバイタルの取り方です。
 これは患者観察の上でとても重要な手技ですので、出来るだけ出来るようになりましょう。
 ただしそのためには練習や慣れが必要です。
 自分の身体や家族の協力などで、実際にやってみて、繰り返し練習しておくことが大切です。

 細かい資機材の使い方は資機材取扱いマニュアルを参照して下さい。
 ここではバイタルを取る上での基本的な方法やポイントを再確認していきます。

[意識レベル]
 意識レベルにはJCSとGCSによる表現がありますが、当団体としては比較的簡単で最もよく使われている、
 JCSを覚えておけば良いと思います。
 JCSは3-3-9度方式と呼ばれ、以下の9つに分類されます。
 なお、どれにも該当しない意識清明の状態はJCS-0、「意識レベルクリア」と言います。

  【開眼している】
    T-1(今一つハッキリしない)
    T-2(見当識障害がある)
    T-3(自分の名前や生年月日が言えない)
  【刺激で開眼する】
    U-10(普通の呼びかけで容易に開眼)
    U-20(大声や身体を揺さぶることで開眼)
    U-30(痛み刺激を与えて辛うじて開眼)
  【刺激しても開眼しない】
    V-100(痛み刺激に対し払いのける様な動作)
    V-200(痛み刺激に対し手や足を動かしたり顔をしかめる)
    V-300(痛み刺激に対し全く無反応)

 〈ポイント@〉
  基本的に、初期の観察では意識レベルは大まかな"桁数"で構いません。
  傷病者に接触時、目が開いていれば、喋れなくともJCS一桁と判断します。

 〈ポイントA〉
  T-3とU-10やU-20の差は曖昧で判断に困ることも多いですが、分からなければより悪い方で判断しましょう。

 〈ポイントB〉
  痛み刺激の与え方には色々な方法がありますが、最もやりやすく痛いのが、握り拳を作り、
  中指か人差し指の第二関節で傷病者の胸骨(胸の真ん中)をグリグリする事です。
  それでも一切無反応なら、JCSV-300(さんのさんびゃく)、意識無しです。



[呼吸数]
 呼吸数を測るときは、見たままの状態で、胸や腹の上がり下がりや、鼻や口の呼吸の音を聞いて数えます。
 数えるときは必ず秒針付きの腕時計を使い、6秒間の呼吸数×10か、10秒間の呼吸数×6で算出しましょう。
 ただしこの測り方は1分間きっちりとは測っていないため、正確な数字は出ない事を頭に入れておいて下さい。
 しかし、現場ではそれで十分です。現場で知りたいのは、とにかく異常があるか無いかということ。
 早すぎたり遅すぎたり、"イビキ様の呼吸"や"笛の音の様な呼吸"であれば直ちに危険な状態と判断します。

 〈ポイント〉
  腕時計は必ず秒針付きの物を選びましょう。
  デジタル時計でも測れますが、アナログ時計の方が測りやすいのでおすすめです。



[脈拍数]
 人間の身体の中で、外から触って脈が触れる場所は決まっています。
 主に使う場所は、上から順に…
  総頸動脈(そうけい)=首の側面
  橈骨動脈(とうこつ)=手首の内側の親指側
  上腕動脈(じょうわん)=肘の内側
  大腿動脈(だいたい)=脚の付け根
  足背動脈(そくはい)=足の甲   ...など。

 数え方は呼吸数と同様です。
 リズムがバラバラだと不整脈の可能性があり、弱く触れにくい場合は低血圧の可能性があるなど、
 脈の触れ方からもある程度の予想をすることが出来ます。

 〈ポイント@〉
  触れるときは人差し指・中指・薬指の三本で、軽く触るようにします。
  強く押すと、自分の指の脈を感じてしまい分かりづらくなります。

 〈ポイントA〉
  脈を触れるときは、余裕があれば左右それぞれ触ってみましょう。
  左右の脈の強さに差があれば、循環器系に異常があるかもしれません。

 〈ポイントB〉
  総頸動脈に触れる際は、少し押し込むような形にすると触れやすくなります。
  ただし、左右の総頸動脈を同時に触れてはいけません。



[血圧]
 血圧を測るには、血圧計と聴診器を使います。
 血圧計には自動式と手動式(アネロイド血圧計や水銀血圧計)があり、
 慣れれば手動式の方がより早く測ることが出来ます。出来るだけ手動式で計測できる様になりましょう。
 血圧を測る方法として、聴診法
(ちょうしんほう)と触診法(しょくしんほう)があります。
 "聴診法"は聴診器で血管内を血液が流れる音を聞いて判断し、
 "触診法"は血液が流れ出したことを橈骨動脈で脈を触れる事により判断します。
 触診法はその方法上、最高血圧(上の血圧)しか測れませんが、騒音の中で聴診法が使えない場合や、
 とにかく大至急に最高血圧がどのぐらいかを知りたい場合などに有効です。

 〈ポイント@〉
  マンシェットを巻く位置と巻く強さに気をつけましょう。巻いた後に指一本が入るぐらいの余裕があるとベストです。

 〈ポイントA〉
  聴診器を当てるときは、いきなり傷病者の皮膚に当てると冷たいため、一度手で温めてから当てるようにしましょう。

 〈ポイントB〉
  脈が触れるかどうかで、おおよその最高血圧を知ることが出来ます。
  橈骨動脈で触れたら80以上、大腿動脈で触れたら70前後、総頸動脈で触れたら60前後と言われています。
  総頸動脈でも触れなければCPA、または呼吸していてもCPA一歩手前でしょう。



[体温]
 体温は意外に重要なポイントです。風邪を引いたときに体温が高いかどうかを気にするのと同じで、
 平熱なのか高熱なのか低体温なのかは知りたいところです。
 体温を測るときは、普通の脇に挟む体温計で普通に測ればOKです。

 〈ポイント@〉
  体温計は、測定終了までの時間が短いものを選びましょう。
  耳で測るものやレーザー式の非接触型もありますので、それぞれの使い方や長所短所を理解し、状況により使い分けましょう。



[SpO2]
 SpO2とは血中にあるヘモグロビン(酸素を運ぶ役割をするもの)のうち、
 肺で取り込まれた酸素と結びついているヘモグロビンが、どの程度の割合で血中にあるのかを表す数値です。
 つまりこの数値が低いと、肺できちんと酸素を血液に取り込めていないこと(→呼吸器系の異常)や、
 心臓がきちんと血液を全身に送れていない(→循環器系の異常)などが考えられます。
 SpO2はパルスオキシメーターで測定します。
 パルスオキシメーターとはその名の通り「パルス
(脈拍)」と「オキシ (酸素)」を測る機械です。
 指に挟み、爪部分に特殊な光を当てることで測定しています。脈拍も同時に測れるので便利な機械です。

 〈ポイント@〉
  脈拍数も見れる事から、患者観察を開始したら早めに装着すると良いでしょう。手の指がダメなら足の指でも測れます。

 〈ポイントA〉
  パルスオキシメーターは、冷えた手指だと測れないことがあります。
  冬場は手を握って温めてあげるか、カイロで温めるなどしてから装着しましょう。
  またマニキュアを塗った指も測れませんので、同意を得れれば除光液等でマニキュアを落として装着しましょう。

 〈ポイントB〉
  パルスオキシメーターを付ける際、挟まれるので痛いのではないかと思う方もいます。
  「指に測定のための機械を挟みますね、痛くないので楽にしてて下さい。」等の声掛けが重要です。


 ここまで紹介してきてお気づきの方は多いでしょうが、
 バイタルを取る上で必要なのは《正常値》を知っておく事です。
 この数値は異常なのか正常なのか、知らなければ判断のしようがありません。
 しかも年齢によって正常値は異なりますので、しっかりと調べて覚えておく必要があります。
 そして、それらを時間と共に必ずメモして残すこと。
 その情報はとても大切で、救急要請となった場合は救急隊に引き継がなければなりません。
 バイタル測定にもたくさんの技術と知識とコツが必要です。日頃から練習を心掛けておきましょう。


 以上、〜バイタルの取り方編〜でした。








第3回 〜各種応急手当編〜

 応急手当といっても、どのような傷病に対してどのような処置をするかは異なります。
 救護班として、応急手当は最低限出来なければいけませんので、必ず覚えて出来るようになりましょう。
 また、これら処置をする際はすべて「マスク」「手袋」などの感染防止具を着用している事が前提です。


《外傷系》
[傷]
 傷には色々な種類があります。
 ・すり傷(擦過傷)
 ・ズルズルになった傷(坐創)
 ・切り傷(切創)
 ・ぱっくり割れた傷(割創)
 ・刺し傷(刺創)         ...など。 

 これらすべて、出血が続いていれば、まず滅菌ガーゼを使用して直接圧迫止血法で止血を試みます。
 出血が止まれば水または生理食塩水で傷口を洗い流し、滅菌ガーゼを当てがい、セラオビや包帯で固定します。
 大きさによっては絆創膏でも構いません。
 小さな傷であればマキロン等の消毒液を使用してもOKです。大きな傷には使わないでおきましょう。
 なお、頭部への外傷(頭を打った、頭から血を流している等)は、脳挫傷の可能性を否定できないため
 基本的にすべて救急要請して下さい。

 (ポイント@)
  外傷の多くが出血を伴い、傷病者が血だらけな事も多いですが、案外傷口は小さな一カ所だけだったりする事もあります。
  焦らずに傷口を探し出すこと。

 (ポイントA)
  ガーゼなどの当て布に血液が滲んできたら、もとのガーゼを取り除かずに、その上から別の当て布を重ねて圧迫し続けること。

 (ポイントB)
  傷口が手足ならば、直接圧迫止血と併せて、傷口を心臓よりも高い位置に挙げると効果的。

 (ポイントC)
  傷口が広い、深い場合は縫合処置が必要なため、病院受診を指導するか救急要請すること。

 (ポイントD)
  何かが突き刺さっている様な場合は絶対に抜かず、そのままの状態で抜けたり動いたりしないように固定し救急要請すること。



※大量出血の場合※
 外傷などで体内の血液を急速に大量に失うと、出血性ショックという重篤な状態になり、生死に関わります。
 以下の様な症状が現れたら、ショック状態を疑います。
 すぐに救急車を要請して、全力で止血に当たってください。
 ・手足が冷たく、湿っている
 ・顔色が真っ青
 ・冷汗をかいている
 ・脈が速く弱い
 ・目がうつろ
 ・表情がぼんやりしている
 ・無気力、無関心になっている
 ・うわごとを言っている

 なお、大きな事故などで出血と意識障害の両方があり、血液が傷口からピューピューと噴出している場合は、
 止血を優先してください。



[骨折]
 骨折の見分け方として、以下の様な方法があります。
 ・患部がはれる
 ・形が変わる
 ・動かしたり触れたりすると、激しい痛みがある
 ・自力では動かせなくなる

 骨折部を中心に前後の関節を副え木で固定し、骨折部に負荷がかからないようにして、
 できるだけ早く整形外科へ行くよう指導、または救急要請する。

 (ポイント@)
  固定する際は、骨折部及びその上下の関節を動かさないように安静にする。出血していれば、止血する。

 (ポイントA)
  骨がとび出していたり、骨折部が変形していても、無理に直さないこと。




[やけど]
〈軽〜中症の熱傷〉
 ただちに患部に水を流しながら、洗面器などにつけて痛みが治まるまで冷やす。
 皮膚に衣服がくっついている時は、脱がさずにそのまま冷やす、またはその部分を残して衣服を切り取る。
 処置後は早めに皮膚科を受診するように指導する。ごく軽症のやけどは、十分に冷やしたら何もしない。
 痛み、赤みがとれたら(和らいだら)、そのままにしておけば治る。

 (ポイント@)
  氷嚢や保冷剤などを使うときは、清潔なタオルなどにつつんで患部にあてること。

 (ポイントA)
  指輪、腕時計など装身具は速やかに外す。軟膏、消毒薬など何も塗らないこと。


〈重症の熱傷〉
 範囲の「広い」または「深い」やけどの場合はすぐに救急要請する。
 大きなやけどは、患部を清潔なタオルやシーツなどでおおって水をかける、
 あるいは水に浸した清潔なタオルやシーツなどで患部を冷やす。

 (ポイント@)
  重症のやけどでは、水で冷やす以外のことはしてはいけない。

 (ポイントA)
  皮膚が剥がれるのを防ぐため、出来るだけ動かさないこと。



《内科系》
[頭痛]

 軽い頭痛であれば、仰向けに寝かせて安静にする。
 以下のいずれかに該当すれば、脳卒中を疑い、ただちに救急要請する。
 ・まさに無から有へと突然発症した頭痛
 ・今まで経験したことのないほどの強い頭痛
 ・意識がおかしい
 ・顔のゆがみ
 ・ろれつが回らない
 ・吐き気・嘔吐
 ・麻痺
 ・けいれん
 ・呼吸の乱れ
 ・目の痛み、目のぼやけ
 ・行動異常
 ・歩行障害
 ・失禁



[胸痛]
 ただちに救急要請すると同時にAEDを近くに用意しておく。基本的に胸痛で我々に出来る処置はない。
 意識があるなら衣服をゆるめ、本人のいちばん楽な姿勢をとらせる。
 ただし、寝かせてはいけない。座位または半座位にして救急車の到着を待つ。
 その間、どのような痛みか、痛みが移動していないかなど、聞けることは聞いておくこと。
 なぜなら、傷病者の様態が悪化した後では、既往症などの必要な情報が聞けなくなる可能性があるため。

 (ポイント@)
  毛布などをかけ、暑過ぎない程度に保温する

 (ポイントA)
  不安がらないように元気づけ、落ち着かせる。不安は発作を悪化させるため。

 (ポイントB)
  食べ物や飲み物を与えない。口のなかに何か入っているなら出させる。




[腹痛]
 軽い腹痛であれば、ひざを立てて仰向けに寝かせ、安静にする。
 以下のいずれかに該当すれば、ただちに救急要請する。
 ・激しい痛みが続く、または短時間でぶり返す
 ・吐いても痛みが治まらない
 ・お腹がふくれ上がる、板のように堅くなる
 ・血便があり、右下腹部にしこりがある
 ・性器から出血している(女性の場合)
 ・ショック症状がある



 以上各種応急手当について振り返りましたが、応急手当の種類と対象はまだまだたくさんあります。
 詳しく分かりやすくまとめられているサイトをご紹介しますので、各自で自己研鑽に励みましょう。
 この第3回の内容も以下のサイトを参考にしています。
 http://health.goo.ne.jp/medical/emergency/oukyu006


 以上、第3回 各種応急手当編 でした。







第4回 〜傷病者への接遇編〜

 私たち救護班が救護現場で相対するのは、身体に傷病を負った“人”です。
 私たちは傷病者に対する救護を任務としていますが、相手にとって傷病を負う事は非日常的な出来事であり、
 この相違の中で、短時間で傷病者からの信頼を得なければなりません。
 そのためには〈接遇〉がとても重要になってきます。
 「助けてあげてる」という気持ちは、心で思うことは構いませんが、傷病者の前で表に出してはいけません。
 また、高圧的な態度も御法度です。
 傷病者は身体に傷病を負っていると同時に、「痛い」「辛い」「苦しい」「迷惑をかけてしまった」など、
 "心"にも傷を負っています。
 その傷は、傷病者に一番に接触する私たち救護班の態度一つで、大きくも小さくも出来てしまいます。


[挨拶をすること]
 挨拶は人間関係の基本です。たとえそれが救護現場であっても同じです。
 接触時は「こんにちは」「こんばんは」の優しい一言から始めましょう。


[名前を名乗ること]
 挨拶と同時に、自分が何者であるのか(名前・所属・資格など)を明らかにしましょう。
 「B.L.S.救急KOBEの○○といいます。」と言っても構いませんが、相手に分かりやすくする事も大切です。
 私は消防の救急隊と間違われないように「救急ボランティアの○○と申します。」や、その時のイベントごとに
 「ルミナリエ救護班の○○といいます。」等とあえて言い換えています。
 看護師の方や救命士の方は「救急ボランティア看護師の○○です」と、資格も同時に名乗りましょう。


[相手を名前で呼ぶこと]
 自分の名前を名乗った後は、相手の名前を聞きましょう。
 「お名前を教えていただけますか?」「お名前はなんと仰いますか?」と、手早く聞きます。
 その時の返事で意識も大まかに確認し、名乗ってくれた後は「○○さん」と相手の名前で呼びましょう。
 「おじいちゃん」「おとうさん」「おっちゃん」などは基本的に良くありません。
 親しみを込めてタメ口で話すという方法もありますが、初対面である相手に不快感を与える可能性がある事を
 十分理解し、出来れば避ける様にしましょう。


[傷病者と話すこと]
 呼びかけ、話しかける相手は原則として傷病者です。
 全く意識がない方は別ですが、相手が失語症や意識障害があっても同じです。
 家族や関係者からの情報聴取は重要ですが、あくまで質問や説明は傷病者に対してする姿勢でいましょう。
 救護班員からの話しかけは、傍にいる家族や関係者の耳にも自然に入るため、
 傷病者が答えられない様であれば その家族などが代わって答えてくれるはずです。


[わかりやすい言葉を使うこと]
 傷病者や家族、関係者との会話では、専門用語は使わずに、日常的な言葉で話しましょう。
 たとえば「既往症」は「今までにかかったことのある病気」、「服薬」は「今飲んでいるお薬」、
 「バイタル」は「身体の様子」、「心肺停止」は「心臓も呼吸も止まっている状態」に言い換えるなど。


[共感する態度をとること]
 傷病者や家族、関係者が置かれている現在の状況に対して、共感的な態度で望むことが大切です。
  「なるほど、目の前でいきなり倒れられたんですね。それはビックリしましたね。
   今身体の様子を見させてもらっていますので、後で詳しくお話聞かせて下さい。」など。
 また、否定的・批判的な事を言うのは避けましょう。
 「薬を飲み忘れていた」「走っていてコケた」「肩車をしていて子供を落としてしまった」など、
 受傷機転として聴取するのは大切ですが、それに対してどうこう言う立場にはありません。


[高齢者への対応]
 傷病者には高齢者や耳の遠い方もいます。
 しかし、無理に耳元で大声で話したり、細かく区切って話す必要はありません。
 もちろん状況次第ですが、出来るだけ目線の高さに合わせて、少し大きな声で、普段通り話しましょう。
 こちらの表情や身振り手振りが見える方が、耳元で大声で話すよりも伝わりやすいと言われています。
 そして高齢者はどんな方であっても、それなりの尊厳を持って接することを忘れてはいけません。
 先ほどの〈名前で呼ぶ〉もそうですが、悪気はなくともタメ口や幼児言葉を使って話しかけてはいけません。
 それは相手の尊厳を傷つけ、お互いの信頼関係を壊す事に繋がります。
 いち傷病者として、丁寧語で普通に話すことを心掛けましょう。


[子供への対応]
 子供も高齢者と同じく、それなりの尊厳を持って接しましょう。
 また、子供だからといって説明を省いたり、嘘をつくのは良くありません。
 痛みが伴う様な処置の場合も、「痛くないよ」ではなく「ちょっと痛いけど我慢しようね」など、
 本当のことを伝えた上で頑張ってもらいましょう。
 また、傷病者が子供でその場に親がいる場合は、親からの情報を積極的に収集しましょう。
 親の方が我々が見るより子供のことを良く分かっています。
 たとえば顔色が悪く見える子供でも、普段からその顔色なのかもしれませんし、その逆もあり得ます。


[危機的な状況の場合]
 傷病者が心肺停止状態の場合など、我々は直ちにCPRを行うことと思います。
 しかしそれを見ている家族や関係者はどう思うでしょうか。何が起きているのか、何をされているのか、
 これからどうなるのか、不安で一杯でビックリしているはずです。
 そうした方は、放っておくと活動の支障になる場合もあります。我々が落ち着いて説明することが大切です。
 例えば、救急要請と仲間への応援要請をしたあとに、CPR等の処置をしているのとは別の隊員が、
 「ご家族の方ですね?救急ボランティアの○○と言います。
  いまこちらの方の様子を見させてもらいましたが、心臓も呼吸も止まっている可能性があります。
  こちらで既に救急車は呼んでいますので、それまでの間、出来る限りの処置をさせてもらいます。
  落ち着いて、まずこの方のお名前と年齢、生年月日を教えてもらえますか?」などと丁寧に対応すること。


[処置をした後に伝えること]
 救急要請をするような重傷の場合はそのまま救急隊に引き継いでしまうため話は別ですが、
 軽傷の場合など、我々救護班で処置できる場合は多くあります。
 そうした際、処置したあとには必ず、傷病者や家族には「これはあくまで応急手当ですので、
 もしもまた気分が悪くなったり(傷口が開いたり)した場合は、必ず病院に掛かって下さいね。」や、
 そもそも病院に行った方が良いが救急要請には至らなかった場合などは、
 「このあとすぐに○○科がある病院(かかりつけの病院)を受診して下さい。」と伝えて下さい。
 これは我々の責任逃れの為ではなく、傷病者自身の為に伝えなければならない事です。
 そして最後は、「ではお大事になさって下さいね。失礼します。」と、
 思いやりの言葉を忘れずに現場を後にしましょう。


 
(参考文献:「救急活動コミュニケーションスキル 何を聞く?何を伝える?」著・坂元哲也 他 - メディカルサイエンス社)


 以上、第4回 傷病者への接遇編 でした。





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